小説「月と風」のこと

インディーズ電子書籍マガジン SIGH vol.1
SIGH vol.1(表紙)

 SIGH vol.1 に掲載された「月と風」は、このサイトで公開している「 月の風 」の改訂版にあたります。

 物語としての起伏ではなく、中学校の卒業式を迎えた少女の独白によって、作家を目指す彼女の不安に満ちた心境を描いています。これはSIGHのコンセプトの一つでもある「才能と溜め息」というものにも合致した内容になっています。

 主人公である少女のモデルはかつての友人であり、自分自身でもあります。勝手ながら、小説や漫画を書いた事のある人なら多くの人が経験しているのではないか、と思っています。

 

 才能って難しいものですね。僕は中学校の時に先生から「才能という言葉に頼るな」という話をされました。才能という言葉は目安のようなものであるから、と。中高生に限らず10代や20代のころには、ほとんどの人は実績なんて持っていませんから、才能とか「俺がやらなきゃ誰がやる」というプライドみたいなものを頼りに書いていくしかないのかもしれません。「才能」は山を登るときの「目印」にすぎず、山を登っていくための「足場」となるのは「経験(実績)」しかないのです。

 正直なところ僕にはこの実績すら大した物がありません。だからまだ「才能」や「夢」や「憧れ」や、そういうアヤフヤなものを目印にしていくしかない若造です。ちょっとずつでも先に進みたいと常々思っているのですが、否定されることへの恐怖もいまだに消えません。

 というような自分の気持ちを軸にして肉付けしたものが「月と風」です。ウジウジとした独白なので好みが分かれる小説になっていると思いますが、読んでいただければ幸いです。